ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

尖って光る

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自分の美学に殉じて死ぬと誓いを立てたあの日の彼は、少し透明すぎるので昔のおれとは思えません。水色すぎる。眩しいというより澄んでる。頭上の空も澄んでいて、むしろ瞳を潰しかねない丸みのなさを感じます。十四歳、思春期中期。硝子のように硬質な青空のもと不機嫌そうな顔をしている。今のおれなら可愛く思いそのままずっと歳を取るなと半分本気で言うでしょう。美学とリアルの兼ね合いを取れる時代はいずれは終わる。今のうちに蔑んでおけ。世界を蔑む権利なら、今の君にはかろうじてある。汚れを知れば優しくなるが、過去の自分を裏切りもします。後ろめたくはないけれど、少し寂しい感じもします。彼の描いた未来の自分。おれはそれとは違うので、寂しい感じが少ししますね。彼は大人を嫌っていないけど、妥協してまで生き延びる彼らを理解できません。むかつくものは媚びとお愛想、綺麗ごと。彼の眼差しを、澄んでいるけど憎悪を秘める眼差しを例えるのなら鏡です。醜いものを醜いものと映し出す鏡。そうすることでほぼ無自覚に醜いものに復讐している。理想を壊す現実に復讐をしています。彼は知っています。彼に説教をする大人は、尊敬するに値しないと。なぜ彼を屈伏させたがるのか? 彼から身を守るため、彼のような存在を否定しないと自分が否定されるため。やっぱり少し眩しいですね。光のような無情さがある。今のおれにもプライドはあるけれど、彼の瞳を怖れずに見返すことが出来るかな。

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