ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

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太古のような夜である。信じがたいほど、にわかには信じがたいほど黒いのだ。黒くて、広大。海をはらんだ広さとも認識される印象と膚。静かな闇の膚触り。黙想さえも拒むほど冷え冷えとした無音状態。やわらかいのは膚であり風であるから呼吸は楽だ。「綺麗ね」と、彼女が言った。綺麗ね。続く言葉はなかったがなぜか何かを聞いた気がした。何か、葉擦れのようなものを。マンションのベランダから眺める大停電の夜。ありとあらゆる思い出の集積としての今の自分。綺麗ね。おれは言った。「そう、綺麗……」


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これで終わり?という感じですけどね、この作品はこれでいいと思っています。