ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

一月三十一日(月曜日)

夕方なんて好きです。影と疲労の相性の良さ。疲労に曇る眼差しに優しいものは影である。少し充血してますし、眩しいものは求めてません。眼は心理にも影響し、胸のうちにも陰が差す。孤独のような凛々しいものがこんな時には感じられます。今のおれは余り孤…

天使その人

すれ違っても出逢ってはいないのだろう。人と人とがすれ違う。接近し、互いの呼吸を感じる位置を一瞬占め、そこでつかのま呼吸する。自分のものとするのには、一瞬過ぎて色々と足りない時間。そして互いを離れていく。接近し、互いを掠め、そして離れる。こ…

一月三十日(日曜日)

晩めしを中華料理屋で食いました。炒飯と麻婆豆腐。中華料理屋では麻婆豆腐を絶対頼む人なのです。基本、麻婆豆腐ならどんなものでも美味しく食べれる。店のものでも家庭のものでも。ワンタンは断然、家庭派ですけどね。お店の高級な味より家庭の味。麻婆は…

猶予期間

いま何時? 午前か午後か真昼と思う。彼女は窓のそばにいた。表の道が、もの凄い感じで死んでいる。二階の窓からそれを見下ろし、そして彼女は、自分の色について考えた。色? 分かっているはずだ。色というほど明確なのは私の場合、思い出だけと。私はすで…

冬の日である。冬の、朝と夜明けのあいだごろ。電話の主がこう言った。夢を見たの。三日続けて同じ夢を。砂漠を泳ぐ魚の夢を三日続けて見るなんて、変でしょう? 私は店をやめようと思います。その日の午後、おれはスーパーにいた。スーパーの食品売り場に。…

一月二十九日(土曜日)

土曜日、好きです。金曜の夜と土曜日ばっかりずっと続いてくれたらいいなと思いながら生きています。必ずしも休日だからではなく、何か特別感があるから好きですね。ワクワクする(笑)飲み屋で働いていた頃からの習慣で、土曜日は絶対に飲みます。いつもよ…

灯台

眠りの足りない人間を、屋上で見つけた。この街には灯台がある。海も岬もないけれど、それは確かにそこから見える。彼女の髪は荒んでいた。乱れているというより荒んでいるというほうが的確なのだ。狂いかけているようにも見えた。破れかけた心臓を持ち歩く…

一月二十八日(金曜日)

駄菓子の「蒲焼さん太郎」をご存知でしょうか。あれ、「さん」の位置がおかしいですよね。「蒲焼太郎さん」では? もしくは、「さん太郎」という名前の蒲焼きなのか。スーパーで売っていたので買いました。十枚。大人買いですね(笑)昔より少し小さくなった…

戒厳令

「街」は、恐らく次のように定義される。すなわち、研究室であると。天がまた良からぬことを始めたのだ。我々も知らないわけではない。ノームトル・キルケラルサは壮大な人体実験である。太陽と肉体について、月と眼差しについて、人間の反応を観察し然るべ…

一月二十七日(木曜日)

知り合いの台湾人はいま台湾にいる。時々LINEでやり取りします。おれは何故だか彼女のセフレまで知っている(笑)彼女とは、彼女が帰国してからのほうが親しくなりました。日本の飲み屋で働いていた時、彼女は日本語がまるで出来なかった。こちらも台湾語が…

第三の処女

赤いはずである。私の夢はめまいのように赤いのだ。少し狂っているからであり、女だからでもある。女だから? むろん彼女はこれには何の根拠もないと自覚していた。この考えには理論的にも統計的にも裏づけがない。彼女と仲のいい処女が言ったのだ。たまに視…

一月二十六日(水曜日)

周りの人間がときどき転ぶ。大人になったら余り転ばないはずだと思うんですけどね、おれの周りは転びます。うっかりさんが多いのかな(笑)それか全員、酒飲みかです。おれは今日はビールを飲むと決めています。ビールの味は好きなんだけど、すぐに満腹感を…

返事を待っています

捨てるものなど何もなかった。呪いがあるとするならば、それが恐らくそれなのでしょう。返事を待っています。結婚を申し込んだのに、いまも返事を聞けていません。砂の大地を感じつつ、時計の音を聞いている。あの店から見えるのです。ふたりでパイを食べた…

一月二十五日(火曜日)

今日はやたら歩いたしネギを食べた。おれの血液はいまサラサラであると思われます。何となくだけど、いろいろ若返ってる感はありますね。ヘタしたら、見た目も若返っております。二歳前後ですね、若返ってます。二歳若返っても傍目にはよく分からない。だか…

彼の思い出

日溜まりを避けて歩いた。彼女と、そして彼女の思い出は。あの人ならば死んだけど、でもそれはいつのことだろう。輝くものは表面だけのはずである。いつだろう? 彼女には分からなかった。心のように感じやすい敏感な光がある。指先で突っつけばたちまち割れ…

一月二十四日(月曜日)

ケンタッキーの期間限定メニューを食いましたよ。グリーンホットチキンですね。グリーン。列車のグリーン車、好きです。グリーンカレーはまあまあ好きです。グリーンホットチキンも好きな部類に入りました。ハラペーニョの辛さと謳っていたけど、そんな辛く…

おはなしのあと

水色で静かだ。崖の上では一台の白い車が燃えている。音もなく淡々と、炎が白いものを包んで、そして使い果たそうとしている。空が使い果たされている。赤い炎が白い車を内包し、そうしてそれは青空と矛盾もせずに、ただそこにある。崖からは海が見え、海は…

増えた!

びっくりしている。今日、読者の数がいきなり増えたのです。びっくりし、そしておののいている。おののくという言葉を使うことは普段余りない。いま、おののいているけど、それを悟られないように普通の顔をしています。余裕な顔をしている。周りの人間はこ…

優しい鼓動

粉雪である。何か意外な感じだ。少年はその理由など敢えて探ろうとはしなかったが、直感で答えをすでに導きだしていた。時間の問題、落下の速度の問題である。降雪という現象に対して人の心に宿るイメージ、影像。雪の降る速度についての固定観念。それを微…

ファンタジー

全て所定の位置にある。街もテレビも太陽も。このテレビはゴミであり、ゴミ捨て場に置かれているがそれも半年前からだ。持ち主は死んだと思う。理由はないが彼女はなぜかそう考えている。持ち主が死んだから、テレビは外で暮らしてるのだ。ここにあるのはゴ…

応援は出来ない

最近犬を見ない。犬の散歩をしている人がなぜか近所にいないのです。おれはパグが好きでして、パグを見るともう食べちゃいたいと思うんだけど、パグとの遭遇率は本当に低い。生のパグをもう何年も見てないです。ある種のお年寄りは皺の感じがパグと似ている…

口笛

海は青くて空と似ていた。空と同じで光の帯が住んでいる。風と一緒にそよぐ光が。光がそよぐ。それは奇妙なことだけど、でもたぶん、そうでもないと言う人もある。科学的に奇妙なことは、大体素敵ですからね。景色は澄んで、そして見事に澄んでいる。海と浜…

一月二十日、木曜日

けさ、サッポロ一番みそラーメンを食ったのです。まぁ当然のように卵を入れたんですけどね、そこで思ったわけです、卵なしのサッポロ一番みそラーメンをおれはもう食えなくなっているなと。味気ないと感じてしまうと思う。卵一個の値段は二十円くらいか。つ…

夢を見ている

声の感じがざらざらしてる。牙を向く猫の唸りと似てないこともない。大人の男にふさわしい落ち着いた低音の声音ではある。だがノイズのようなものがしばしば、予感のように閃くのです。ほのめくようにたち現れる。声の上澄み、声の浅瀬に浮かんで見える、感…

海月

その女なら知っている。彼女の瞳は青いので、静かに燃える月のようです。気高いものを見るのには最も適してない場所で、最善を尽くそうといつも努めて暮らしてる。自分に対し最善を尽くそうと。諦めるには色々と備わり過ぎているのでしょう。青いのはドレス…

身も心も

飲みに行くのに許可がいる。女性がそばに座る店なので、彼女から許可を得る必要があるのです。嫁に頭の上がらない亭主になった気分にはなる。が、もちろん不満などありません。むしろ彼女は寛大だと思う。理解のある人だと思う。飲みに行くのはストレスを溜…

風の甘味(散文詩)

彼女といると愉しかった。風には少し甘味があると真顔で言った彼女のことを、子供のように純白と感じたこともありました。不思議なことに思えたものです。彼女は夜と契っていたから、闇の足りないわけではなかった。でもたぶん、不思議でもないことでした。…

最後の世代(習作)

星が光を取り戻した。正しいことに思えたものだ。それは静かに始まったこと。次の秩序の始まりだとは誰も思わず、ただ誰しもがこう感じてた。夜の長さが変わったらしい、と。人類は時計の針を真に受け過ぎていたのです。未来はすでに今だとは、人はなかなか…

一月十七日、月曜日

マウントレーニアのクッキー&クリーム風味なる女みたいなものを飲む。いちごのアイスも買いました。牧場しぼりのつぶつぶいちごです。つぶつぶと謳っているから、つぶ状の何かが入っていると思われます。果肉かな。まだ食ってません。ところで、けさ公開し…

無駄なこと書いた

SNS的な、それは赤いポストである。前世紀の遺物のようなしろもの。何がSNS的だというのだろう。人と人とを繋ぐものだから? 交信手段、コミュニケーションの幅をひろげるために人間の創出したもの。或いは言葉の、すなわち意味の堆積としての赤いポス…