ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

口笛

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海は青くて空と似ていた。空と同じで光の帯が住んでいる。風と一緒にそよぐ光が。光がそよぐ。それは奇妙なことだけど、でもたぶん、そうでもないと言う人もある。科学的に奇妙なことは、大体素敵ですからね。景色は澄んで、そして見事に澄んでいる。海と浜辺と一人の女。明瞭な輪郭がある。質感があるとも言えるけど、とにかく女もその一部である。忘れること、思い出を失うことも然して問題ではない。そう思わせる海がある。永遠を想うのは死と似てるからやめておくけど、永遠と似た時の不在を感じます。彼女は何かを忘れるためにここへ来た。或いは別の目的のため。彼女の瞳は遠くを見ている。何も見えないくらい遠くの場所を見て、そして何かを見ています。或いは何かを聞いている。穏やかな波のさらう音。たぶんそれとは違う何かを聞いているのです。感じている。呼吸のような何かを感じています。この瞬間を写真に収め、ずっと仕舞っておきたいと思った人があったのでしょう。そうして彼はその写真を隠し、自分だけのものにしてるけど、タイトルも実は付けている。「口笛」でした。

※ 画像はフリー素材です。

これは半分フィクションです。