ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

おはなしのあと

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水色で静かだ。崖の上では一台の白い車が燃えている。音もなく淡々と、炎が白いものを包んで、そして使い果たそうとしている。空が使い果たされている。赤い炎が白い車を内包し、そうしてそれは青空と矛盾もせずに、ただそこにある。崖からは海が見え、海は午前の陽射しのもとで明るく澄んで、呼吸している。この海は美しい。全てが口を閉ざしているが、全て呼吸し、だが音がない。全てただそこにある。物語ならもちろんあると思われる。背景を為す物語、コンテクストだ。犯罪と死と追われること、逃げることについての物語。或いは最後の恋についての物語。心中によって完成する恋の一つの形式である。だがいずれにしても、全て終わったあとだろう。全て終わった。主人公が死んだのだ。残ったものは彼の周辺、声を失くした世界である。太古のように言葉のない世界。全て明るく澄んでいる。これは意外なことに思える。全てが使い果たされている。自然なことと思われる。微かな風の指先を感じるならば、静けさも死とは異なる。風は吹いているでしょう?

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月曜ですね。やだな。