ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

一月十六日、日曜日

子供の頃は日曜の夕方を愁えていたものです。休みの日が終わってしまう。子供にとっては苦しいことです。時計の針の進行を遅らせたいと願ったこともきっとある。「明日なんて来ないでいい。毎日が日曜日なら、友達さえもいらないと思う」他人との関係が自由…

愛も憎悪も失くしたならば

いまは憎悪も肯定している。憎しみを欠いた関係は大抵愛も欠いていますから。若げの至りでおれを愛した、あの頃のおれを愛した少し愚かな人がいたけど、彼女はきっと正しく病んでいたのです。いまのおれなら彼女をもっと大切にするでしょう。しかし彼女はい…

尖って光る

自分の美学に殉じて死ぬと誓いを立てたあの日の彼は、少し透明すぎるので昔のおれとは思えません。水色すぎる。眩しいというより澄んでる。頭上の空も澄んでいて、むしろ瞳を潰しかねない丸みのなさを感じます。十四歳、思春期中期。硝子のように硬質な青空…

一月十四日、金曜日

そしてサムライマックを食う。だがサムライはお上に仕える役人であり、権力の犬である。犬は可愛いから好きである。だがサムライは可愛くもない。むしろ忍者のほうが可愛いと思う。忍たま乱太郎を子供の頃に観てましたからね。忍者の可愛さを知っているので…

運命と似た

未来のために生きてはいない。運命と似た選択もあり、負い目の数を増やしつつ自分に出来ることだけをする。他人の真似をしてもいいけど、苦行のあとに残るのはやけに白髪の増えた人。残忍な時計ばかりが正しかったと知るでしょう。実に多くの人間が、自分の…

ムヒ

かゆいところが移動する。たぶん誰しも経験のあることです。かゆいところを掻いていると、そのすぐ脇がかゆくなる。だから今度はそこを掻く。するとまたそのすぐ脇がかゆくなる。かゆいところが段々と移動していくのです。かゆみを掻くことによって解消する…

幸福小論

子供は雨を嫌わない。長靴を履けるからです。長靴で水溜まりを踏むだけで愉しくなれるのだから子供はいつも大人より興奮している。興奮状態では、つまらぬことでも笑えるので子供の暮らす世界には幸せの種子が多いのです。幸福感と笑いとは、深い縁(えにし…

一月十二日、水曜日

結構風が吹いている。風の便りに聞くものは、大体どうでもいいことなので、最近知ったある人の近況もいずれ忘れると思われる。あの人は、いつも時間に余裕のあるのが好きだった。プレッシャーに弱いのだろうか。スーパーへ行く道すがら、それはおよそ徒歩十…

六年ほど前

調子の狂う愛でした。調子の狂う? 赤い夕陽のさす部屋だから、全て少しは狂っていたと思われます。リビングとバスルームがあり、窓とベッドがありました。シングルだけどダブルの役を担わされてるベッドです。シーツの染みが表すものを、或いは人は嫌悪もし…

妄想です

雪の静かに降る夜に、公園のベンチで死んだ人もある。不幸とは限らないけど切ないなとは思います。その人はきっと眠ればもう一度目覚めることはないと知ってた。最後に見たもの、聞いたもの。出来ることなら音楽を、息をひき取るその時を音楽で優しくしたい…

猫……

場違いな猫もある。たそがれ時の浜辺で猫を、海と語らう孤独な猫を見た人なんて余りいません。もし見たというのなら、たぶん老人と見間違えたのです。お婆ちゃんと。猫みたいなお婆ちゃんていますからね。猫みたいなお爺ちゃんもたまにいるけど、その問題を…

表現者について

SNSでは画家とか歌人とか表現者とばかり付き合っていたけど、自由を感じることは滅多になかった。表現者の多くは政治的には左派だけど、実際には等級意識が強くて権威に弱く目下の者に強い。それに本質的には保守的な人が多いです。例えばだけど、新しい…

一月十日(成人の日)

祝日か……窓の向こうに街がある。屋根と壁の連なり。音が遮断されていても静止画には見えない。立体性と呼吸とがある。存在の確かな息吹き。やろうと思えば二週間はひきこもれる人間だけど、それを許してくれないのが人間関係というものだとも思う。街の呼吸…

夜ですけどね(笑)昨日の朝書いた文章です。冬の日と肌が馴染んで寒くない。冷えているけど寒くはなくて酸素のような身軽さがある。浄化された肉体と似ているものは何だろう。音色のように宙に浮くもの。朝日は薔薇のように狂っているとどこかで書いたこと…

晴れた日曜日

犬のように単純な話、晴れた日曜日が好きである。美しいとは思わない。陽射しの暴く世界には洗剤臭と似たものが漂う。人間は美しいと感じます。漂白された街かどは嘘臭いので詐欺だと思う。いや、それは嘘だけど(笑)陰りを欠いたところには、呼吸停止と少…

土曜の夜

土曜の夜を独りで過ごす場合が多い。彼女の仕事のため。最大の理由はこれ。たぶんあと一つか二つ理由がある。それが何かは知らないが、知る必要のないことだろう。仕事とは、人生を築きも壊しもする重大なもの。おれはつゆほどの不満も抱かぬのです。二人で…

危険の終わり

なぜか橋が浮かぶ。橙色のライトの照らす夜の鉄橋。いつ見たものか定かではない。夜を駆けると橋と出くわす。記憶とも似たイメージが頭の隅にあるのです。人かげのない鉄橋は無人の都市を想わせるけど、心細さを醸し出すのはそれが巨大な沈黙だから。眠りと…

極東独話

ついに大人になれぬまま歳だけ取った人もいますね。運良く彼が人の親なら、子供は彼を許すと思う。親が子供のままなので、子供のほうが大人なのです。自分の親を許すのは子供のいつか出くわす試練。出来損ないの子供はきっと出来がいいから乗り越えるはず。…

情に流され

路地裏の住人であった時代を懐かしむことがある。カタコトの日本語を喋るユキとかユリとかサユリとかいう源氏名の女たちが、おれを大人にしたのです。性的に解放された環境下では愛と欲望を混同したりしない。愛には価値があることを、おれは恐らくそこで学…

眼で忘れる

透き通るような冬の日を、忘れないため眼を瞑ります。視覚情報による記憶は、匂いを殺してしまいがちですから。匂いと、呼吸。別々のものでありながら、あたかも一つのシステムであるかのように溶け合うもの。瞼の裏では光の余韻が明滅と似た運動をする。さ…

記憶の襞

十七年の歳月も、伸び縮みなどするので変だ。永遠にたどり着けないドアとも少し似ています。そのドアは五メートル先にある。だが、いたずらな猫のように、近寄れば離れ、近寄ればまた離れる。近くて遠い思い出も、それと同じで逃れるのです。手繰ればただち…

ご挨拶

いきなり妙な投稿をしてしまい失礼しました。まず挨拶をすべきでしたね。ただ、まだブログの方向性が定まっていないのです。日記、雑談、愚痴、思想、哲学、詩、書きたいことは沢山あります。まぁ要するに、つれづれなるままに、ですね。謙遜でなく本当にふ…

光の迷路

つまらない詩人が多い、と正直に述べてみる。つまらない詩人が多い。忘れ去られたピアノのように、昔の歌にしがみついてる。自分の物語を持たないのだと思う。うわべばかりの詩的表現、制度の枠内から一歩も出ない表現、魂のない表現。彼ら自称詩人たちを離…