ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

眼で忘れる

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透き通るような冬の日を、忘れないため眼を瞑ります。視覚情報による記憶は、匂いを殺してしまいがちですから。匂いと、呼吸。別々のものでありながら、あたかも一つのシステムであるかのように溶け合うもの。瞼の裏では光の余韻が明滅と似た運動をする。さっき見ていた冬の日を、瞼の裏に感じるのです。それは夢想化された現実、夢とうつつのあいだの場所で、呼吸している自分と出逢うこと。

この問題には(ん?問題?)答えもちゃんと用意されています。記憶と視覚の問題には。

目隠しをして性交したことはおありでしょうか。感覚が鋭敏になり、普段より強い快楽が得られます。つまりそれとは真逆のことを、視覚情報は誘発している。感覚の鈍化、体験から得る感動を目減りさせるということ。見ることによって忘れられたもの。音や匂い、触感、肉体の生理的反応。眼を瞑るならよく見える。恐らく誰か偉い御仁の言葉です。きっと正しいお言葉なので、いつも頭の隅に置いています。

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