ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

情に流され

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路地裏の住人であった時代を懐かしむことがある。カタコトの日本語を喋るユキとかユリとかサユリとかいう源氏名の女たちが、おれを大人にしたのです。性的に解放された環境下では愛と欲望を混同したりしない。愛には価値があることを、おれは恐らくそこで学んだ。彼女たちから理解などされてはなかったはずだけど、孤独の影を背負う自分をむしろ喜び愉しんでいた。孤独のそばに微笑は寄り添う。彼女らはよくおれにこう言ったものです。笑って。おれは笑いはしなかったけど、微笑ならしばしば見せたのでした。

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最も長い川の流れを、人は時間と呼びますね。十二年という歳月は、永遠の中の一秒、瞬くような刹那に過ぎない。「あの頃」という感傷主義と親しむほどに歳は取ったが。だが返らない時間のことを、全て昨日と呼ぶ人もいます。昨日のおれは今日のおれより少し子供で可愛かったな。明日のおれは今日のおれより少し大人で賢いでしょう。前向きなのは性格なので直らないから大丈夫です。感傷的なこの文章を、少し悲観はしてるけど。

オチがついたので終わりです。

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