ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

海月

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その女なら知っている。彼女の瞳は青いので、静かに燃える月のようです。気高いものを見るのには最も適してない場所で、最善を尽くそうといつも努めて暮らしてる。自分に対し最善を尽くそうと。諦めるには色々と備わり過ぎているのでしょう。青いのはドレスもだけど、あれは確かに適切なもの。肌の白さとよく馴染むから正しいものに違いないんだ。真夏の夜の沖合いで、ピアノから滴る音を聞くように、何か正しいものがある。美しいとは言わないけどね。それを言ったら彼女の影がひとつになってしまいます。彼女の輪郭が。眼の働きの鈍い奴ほど他人のことをよく知っている。彼女のことを最も浅く知る人間は、彼女を理解しているものです。彼女を最も知らない者は? 彼女のそばで暮らす者、彼女と愛しあう者です。そいつは詩など書いていたけど、彼女の詩だけは書けなかった。

※ 画像はフリー素材です。

散文詩というより詩的散文かな。フィクションです。