ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

クロスルーム

「まだ見つけてない。自分の描いた絵の中に閉じ込められた人がいる。きっと気が狂うわ」そういう彼女も画家である。具象から抽象に至り着くタイプの画家、物の輪郭でなく印象を画布に刻印する。彼女の言葉を借りるなら、それは「残り香を記憶すること」だ。…

日記をですね……

日記を書くのを不定期に変えようと思っています。書きたいことがある時に書く。理由はブログを長く続けるため、精神的な負担となる要素を除くため、早い話が自分を甘やかすためです。散文詩のほうは毎日書きます。そちらは虚構を織り交ぜることが出来るし、…

花火

救急車を自分で呼んだの。でも、間に合わなかった。その人は死んで、今頃たぶん全部なかったことにしている。なかったことに? 彼女はある通り魔殺人の話をしているのである。事件のあった場所を、たったいま通ったのだ。「そう。なかったことに。いやな記憶…

二月一日(火曜日)

ベッドのそばに「裸のランチ」を置いている。ご存知でしょうか、裸のランチ。ウィリアム・バロウズというジャンキー作家の代表作で、脈絡のない超現実的イメージで溢れ返った小説です。おれは決して読書家ではなくて、村上春樹さえ読んだことがないんだけど…

初恋

死んだのは祖母である。赤い硝子のビー玉をひとつ落として死んだのだ。こと切れた瞬間のこと、ベッドから落ちたものがあり、みなが不思議に思ったという。何も握ってはいなかった。ベッドの上のどこかに紛れていたのだろうか? 彼女の孫が疑われた。小学五年…