ある蒸し暑い夏の午後

ときどきポジティブ

こだま

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ビル街には谷間がある。こだまがある。グラスを満たす赤い叫びを聞く者ならば知っている。ここにあるのは置いてきぼりの声、風にちぎれてぼろ布のように破れ去った声である。数秒遅れの現実や、予知夢のような現在、しかしここには未来が足らずいつもくすんだ思い出ばかりある。叫びをはらむ真っ赤な喉を秘め隠してはいるけれど……。夕刻の蝙蝠(こうもり)をたまに見るのは良いものだ。新鮮な驚きがある。ハッとするような速さでビルとビルとのあいだを飛び交うもの、それはその速さによって今をつかのま繋ぎ止めもする。そんな時には声も新鮮である。光のように捉えがたい輪郭をしているが、ともかく声が新鮮である。しかし時間の手触りを感じられるわけではない。思い出だけが触れられるので、ここにはいつも数秒遅れの「今」しかないのだ。こだましかない。或る人はこう述べた。「声とこだまのあいだには忘れられた脈拍がある」……忘れられた脈拍、さっきあなたのした呼吸。これは奇跡のような日常である。奇跡のような……。未来を待っています。


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小難しいかな。そうでもないほうなんだけど。まぁ難しげなのも一つの手法と捉えることも出来るかなと。おれなんかはあんまり分かりやすい本だと物足りなくて、ちょい難しげな本のほうが好きです。読書で苦労したいのかな(笑)まぁでも、余り支持されない文章ではある。人気が出ない。